新商品「中浅煎り」
アコメヤ:開業時は、今より種類が少なかったですね。
中山さん:その後何年かして、実はアコメヤブレンドは世間の珈琲屋さんの豆と比べると、マイルドなタイプではないんですね。ある程度焼き込んであるんです。それで、もう少しライトなものをということで「ライトロースト」を開発しました。
アコメヤ:そして今回、さらにライトな「中浅煎り」を新発売します。それにあたり、ダークロースト⇒深煎り、アコメヤブレンド⇒中深煎り、ライトロースト⇒中煎りと、名称も変更します。
中山さん:はい。お客様の声では、ライトローストよりももっとライトなものが欲しいというのがありました。一般的なライトローストと比べると、しっかり火が入っているということで。ただ珈琲の業界では、ダークローストやライトローストの数値化された基準がないのです。
アコメヤ:そうなんですね。
中山さん:「ライト」も表記としては問題はないものの、一般的なライト寄りのものがラインナップにあってもよいのでは、ということで今回開発することになりました。
ロースト(焙煎)の違いについて
アコメヤ:ローストの違いについて詳しく教えてください。
中山さん:珈琲の味の強さの出し方は2つあります。1つは短時間で焙煎すること。コーヒー豆は生のままだと緑色ですが、これを焼くとベージュになって、茶色になって、焦げ茶色になり、だんだん苦味が増していきます。
生のコーヒー豆にはカフェインが一番多く、焼けば焼くほど減っていきます。ただ、豆の香りも減っていくのです。ある点を超えたところで、窯の中に煙がこもって、その煙の中の糖質や脂質をカラメル化させて、プリンのカラメルのように甘いものを豆に付けていきます。ですから、コーヒー豆の味の強さなのか、焙煎による味の強さなのかで言うと、ナポリなどで飲まれているダークローストは後者、北イタリアは前者ということになります。
コクテール堂のエイジングコーヒーの特長
アコメヤ:コクテール堂さんは、エイジングコーヒーを専門とされていますが、豆をエイジングさせることでどんな変化があるのでしょう。
中山さん:コーヒー豆の中には「クロロゲン酸」という苦味のもととなる成分があり、エイジングをさせることでそれが減少し、甘味を感じやすくなります。
アコメヤ:どんな場所でエイジングをしているのでしょうか。
中山さん:コクテール堂は74年前に国分寺で創業しました。当時は住宅地ではなく風通しがよかったので国分寺でエイジングをしていたのですが、だんだん宅地開発されて風が通らなくなり、エイジングにかかる年数が長くなってしまいました。そこでエイジングのためにより良い環境を求めて、山梨県韮崎市にたどりつきました。日本で一番日照時間が長い明野村のすぐ下に位置します。雨が少なく、釜無川と塩川という二本の川沿いに山からの風が吹きおろしてくるので、その標高500mの山の斜面に工場を建てたのが33年前です。
アコメヤ:豆のエイジングに一番適した土地を探して今の場所にたどり着いたのですね。
中山さん:はい。エイジングは年数でなく、水分含有量が大切。コーヒー豆は麻の袋に入って重量で取引されるので、輸出時から輸入時に水分含有量が減って重量が変わると通らないため、温度管理などをして水分含有量を13%から14%の間でキープし、横浜の港に着いたものを山梨まで運びます。そしてエイジングで、11%くらいまで乾燥させます。
豆を乾燥させるにあたり、「磨き」という作業で、豆についた薄皮を取り除きます。この「磨き」は他社がやっておらず専用機械がないため、精米機を改造してつくっています。
乾燥させているので、強火で焙煎すると豆が割れてしまいます。そこで他社にはない作業として「蒸らし」という工程を入れます。そして時間をかけてローストしていくので、酸化しづらい水分の少ない珈琲豆ができます。
アコメヤ:コクテール堂さんの珈琲は、本当に純度が高い。雑味がなくて美味しい。不純物が極端に少ないですよね。この味わいは、そのような手間ひまをかけた工程のおかげなのですね。