「ごはん同盟」さんに聞く② お米の未来のこと|AKOMEYA TOKYO

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「ごはん同盟」さんに聞く② お米の未来のこと

前回のAKOMEYA通信「おにぎりの美味しい握り方」につづき、ごはん同盟さんにインタビュー。
ごはん同盟さんの活動理念「おかわりは世界を救う」は、AKOMEYA TOKYOが創立当初から大切にしている「一杯の炊きたてのごはんから広がる幸せ」という理念と通じ合うもの。
インタビューは、ごはん同盟さんの活動のきっかけやこれから目指す未来、お米や農業の現状と課題についてなど、お米を愛する同志として、とっても共感する内容に!その模様をお届けいたします。

 ごはん同盟 
ご飯好きの、ご飯好きによる、ご飯好きのための、炊飯系フードユニット。試作係のしらいのりこさん、試食係のシライジュンイチさん、ご夫婦ふたりで活動中。
ホームページ:https://gohandoumei.com


ごはん同盟さんの活動のきっかけ

―― よろしくお願いします。お二人の服、かわいいですね!(黒い長袖に白いエプロン)いつもお二人は同じ服装なんですか?

シライジュンイチさん(以下「ジュンイチさん」):このパターンが多いですね。黒か白の服を着ることが多くて、エプロンはいつも白ですね。「ごはん」っぽくありたいと思って。

しらいのりこさん(以下「のりこさん」):黒は「海苔」をイメージしています(笑)

―― 海苔!かわいいです。あらためまして、「ごはん同盟」さんの活動のきっかけと主な活動内容を教えてください。

ジュンイチさん:私たちは、もともと新潟県出身。私の実家が米農家で、父が育てたコシヒカリで育ったのですが、家を継がずに東京に出てきてしまったんです。それで、何かちょっと親孝行なことをしたいなと思って、実家のお米を個人販売でマルシェとかで売ることを始めたんです。
お米を売りつつ次の展開を考えていたときに、のりこさんが料理の仕事をしていることを活かして、お米を炊いて大勢で食べるイベントをやったらいいんじゃないかと思いつきました。そのイベントを企画した時につけた名前が「ごはん同盟」なんです。

―― 「同盟」というのには何か意味があるんですか?

ジュンイチさん:最初は遊びの活動だったので、「とりあえず、ごはん同盟とかでいんじゃない?」って、思いつきのノリでやっていたところがありました。でも、今では「ごはん同盟」という名前に寄せられてか、「お米を炊いて食べる人を増やしたい」という意味合いが強くなって活動の内容も広がってきましたね。

―― 結果として、ごはんを楽しむ人が増える、その人たちも含めての同盟。

ジュンイチさん:基本メンバーは2人なんですけど、ごはんを食べる人たちも含めての同盟、ですね。
ごはん同盟を名乗ってイベントを定期的にやっていると、「あなたたちごはんに詳しいんだったら、お米の炊き方教えてよ」という依頼をいただくようになったんです。さらには、料理雑誌からごはんにまつわるレシピ考案のお話もいただくようになって、だんだんとお仕事の割合が増えてきました。 最初は遊びから始まったものが、今や本業になってしまいましたね。

―― すごいですね!お米料理って、ある意味無限ですよね。ごはんがベースになって、それに合うものってなったら本当に。

のりこさん:お米は無限ですよね。食材としてのお米だけでなく、酢や味噌など、お米に由来する発酵調味料も含めればキリがないです。日本にはたくさんの調味料がありますから。

ジュンイチさん:最初は、お米料理という意味での「ご飯」だったんですけど、ご飯に合うおかずとか、食事としての「ごはん」まで守備範囲が広がってきた感じはしています。

のりこさん:日本では、お米でもパンでも麺でも、食事をとる時に「ごはんを食べよう!」と言いますよね。それで、たまにパンのお仕事をすることもありますよ。これも「ごはん」だからいいかって(笑)

―― もはや(笑)

ジュンイチさん:「しらいさん、白いもの大好きですよね」って、よく言われています(笑)

―― 白いもの!(笑)


お米を食べる人を増やしたい
のりこさん:今はお米を食べる人が少なくなって消費量も減っているので、お米を食べる人を増やす活動は、これからも頑張っていきたいです。

―― そのお米を食べる人が減っているのはどういう原因でしょうか。

のりこさん:今から60年前の消費量と比べてみると、現在はその半分もお米を食べていないんです。パンやパスタなど、お米の他に食べるものが増えましたからね。日本の食が豊かになったということでもありますが…。 さらに、糖質オフのダイエットが流行ってごはんを控える人が増えたことも大きな要因です。コロナ禍で、お米の家庭内消費が増えたとは言われていますが、外食消費が大きく減ってしまったので、全体的な減少傾向は変わりません。


40代~70代のお米消費量が減っている


のりこさん:年代別の消費量を見てみると、子どもたちは変わらずにお米を食べていて、20年前から比べても消費量が全然変わっていないんですよ。でも、大人たち、特に40代~70代のお米を食べる量が激減しているんです。両親や高齢世代の人たちを見ると、パンとかうどんなど、簡単に食べられるものに切り替えているようですね。

ジュンイチさん:人口のボリュームゾーンの年代の人たちが、お米を一斉に食べなくなったのが大きな要因ですね。

のりこさん:今、ごはんを食べなきゃいけないのは、むしろ中高年の人たちですね。


1週間に国民1人1人の「もう一杯のごはん」で米余り問題を解消
のりこさん:お米の消費量を増やすために、私たちが講演会などでお話するのが「もう一杯のごはん」というお話です。国民1人1人が、1週間にもう一杯だけ多くごはんを食べる量を増やすと、ちょうど現在の米余りが解消される計算になります。

―― わかりやすいですね。1人1人がもう一杯。

のりこさん:そうですね。本当に単純な計算です。

―― 一杯なら、いけますよね。アコメヤのコンセプトが「一杯の炊きたてのごはんからひろがる幸せ」ということで、やはりそのお米の問題に直面してきて、減反で収入が安定しない農家さんがいたり、大豆と交代交代でつくらなきゃいけないとか、休耕田でエタノールを作るというような取り組みをさせていただきながら、もっと何かできることはないかな、と思っているので、まず今の「もう一杯のごはん」、わかりやすくていいですね。

のりこさん:アコメヤさんに、ごはんのお供たくさんあるじゃないですか。炊いたごはんさえあればすぐに食べられる。ごはんは実はファストフードですよね。


ごはんからたんぱく質もとれる

のりこさん:あと、ごはんは身体に悪くない。糖質オフダイエットの流行で「ごはんを食べると太る」みたいなイメージがすごく広がってしまいましたが、そんなこともなくて。
ごはんにはたんぱく質もある。昔の人は、ごはんからたんぱく質を取っていたんですよね。

ジュンイチさん:バランスの取れたごはん中心の食事の良さを、もっと見直して欲しいなと思います。ごはんは「粒食」で、噛む力も鍛えられますからね。


地域による違い

のりこさん:ただ、この米余りの問題って、地域によって捉え方が異なるんです。この間、兵庫県の丹波で講演会をしてきたのですが、この地域で作られる「コウノトリ育むお米」がすごい人気で、毎年7月くらいには売り切れちゃうんです。そんなところで米余りのお話をしてしまって、「うちは全然余ってないけれど…」と思われたかもしれません(笑)

―― そういうところもあるんですね。

のりこさん:人気のお米はすごい売れちゃう。アコメヤさんでもたぶん、差がすごいあると思うんです。それぞれのお米のイメージがもうちょっと良くなるといいなと。

―― やはり、地域の人はその地域のお米を消費するんですね。

ジュンイチさん:米農家は大体そうだと思います。うちの父も、自分の育てたコシヒカリ以外を食べようとしませんから(笑)

のりこさん:「ササニシキ食べて」って言っても頑なに食べないよね(笑)

ジュンイチさん:頑なですね。確かに、食べ慣れた味っていうのもあるんですよね。

―― お米を作るのって、その土地の水とか土を使って作っているからというのもあると思うんですけど、私の両親が長野出身で、長野のお米がすごく美味しく感じるんですよ。気持ちの問題かもしれないんですけど。

のりこさん:それはあると思いますよ。


米農家の課題

ジュンイチさん:日本酒も飲む人が減ってるのも心配です。日本酒を飲む人が減ると、原料である酒米をつくる農家も減ってしまうので。作り続けないと技術もなくなっちゃうから。

のりこさん:いずれ米不足になっちゃう可能性もありますよね。

―― ねえ。唯一自給できるくらいのものなのに…

のりこさん:現役の米農家さんで、60代~80代くらいの方はまだまだ多いと思います。

―― 70代の農家さんが、「若手がもうすぐ来るから」って、来たら60代、て話してて。

ジュンイチさん:農家あるあるですねぇ(笑)。青年部がおじいさんだったり。

のりこさん:でも、米農家は、年を取ってからも就農しやすいという話も聞きますよ。

―― そうなんですか!

ジュンイチさん:たしかに、米づくりは大変な重労働ではあるんですけど、他の農業に比べて、運搬などを機械に任せられますからね。手作業で収穫しなければならない野菜や果樹に比べて、年をとってからも働きやすいみたいです。

のりこさん:だいぶ機械化が進んでいるので、農機具などが用意できれば、60歳からでも米作りができると思います。

―― そこに希望がちょっと見えますね。

のりこさん:60歳なんてまだまだ現役世代ですよ。会社を定年してからでも就農できますしね。


アコメヤに期待してくださること

―― お米の消費を増やしていこう、という中で、アコメヤに期待していただけることって何かありますか?

のりこさん:お米のブランドイメージを上げてもらえるのがうれしいですね。特に、若い人たちのなかでお米を身近に捉える人たちが増えているのは、アコメヤさんの功績だと思います。アコメヤさんの商品は、お米をきちんときれいにパッケージしているし、お店がある場所もデパートや商業施設などで、気軽に行きやすい。

ジュンイチさん:そうね、お米が身近な存在になったよね。

―― たしかにそうですよね。街の中でお米を目にするってあんまりないですもんね。

のりこさん:お米を贈ろうと思っても、米袋のままだと難しいですよね。でも、二合分を小分けにしたアコメヤさんのお米パックならちょっとしたプレゼントにも使えますね。

ジュンイチさん:米袋2kgは、さすがに重いよね(笑)

のりこさん:2合パックなら、食べきりサイズで、今の生活スタイルにもあってますよね。

ジュンイチさん:「このお米は、どこのお米?」みたいな話題から、地元の話になったり、家族の話になったり、お米をきっかけにコミュニケーションが生まれるのがいいなと、アコメヤさんのお米を見て思いますね。

のりこさん:そういう意味ではすごい画期的なお店だと思います。

―― ありがとうございます!嬉しいです。


ごはん同盟さんの活動の今後

―― ごはん同盟さんの活動として、今後どんな未来にしていきたいですか?

ジュンイチさん:活動を始めて10年経ったんですけど、まだまだ我々の声が届いていないところが多いので、もっと声を大にして「ごはんを食べましょう!」という話は続けていきたいですね。

―― 10年!

ジュンイチさん:忘れてるでしょ、10年経ってるの。

のりこさん:忘れてないよ、そんな忘れてませんよ(笑)

―― さきほど、「ごはん同盟」という名前は遊びで面白いと思って付けたとおっしゃっていましたが、ご実家のお米を売りたいから始まっている、発端がもう人のためだったんですもんね。元から先を見てらっしゃったような。

ジュンイチさん:そうなんですよ。そういうことにしておきましょう。(笑)

のりこさん:深い考えがあったの?(笑)

―― でも、ちゃんと人のために始めているからこその、今の広がりなんだなあと感じました。大変勉強になります。ありがとうございました!


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