食卓の中の「季語」を味わう ~春編~|AKOMEYA TOKYO

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食卓の中の「季語」を味わう ~春編~

春は、なんといっても桜の季節。日本の和歌や俳句では「花」と言えば桜のことを指すほど、日本の代表的な花です。
桜は見るだけでなく、食材にもなっています。また春は桜だけでなく、春ならではの海や山の食材もたくさん。
季節を代表するものは「季語」にもなっていて、昔から俳句にも詠みこまれてきました。
今回のAKOMEYA通信では、春の季語を使った食の俳句をご紹介。
俳句とともに、季節をゆっくり感じてみましょう。

はまぐり
蛤のひらけば椀にあまりけり
水原秋櫻子


椀にあまるほどの蛤の大きさが伝わってきますね。最後の切れ字「けり」に、その大きさへの感動が表れています。「ひらけば」のかな表記に、蛤のやわらかさや味のやさしさも感じられます。


ひなあられ
一塊の雪もなくなり雛あられ
阿部みどり女


塊の雪が溶けてなくなる、少し暖かくなったひな祭りの時期。雛あられの中でも雪のような白いあられが食べてなくなったさまとも呼応しているようです。


わらびもち
蕨餅本家と元祖向き合いて
田中冬二


和菓子屋さんは老舗が多く、屋号の頭によく「本家」や「元祖」とついていますね。本家と元祖、どちらが先なのでしょう…向き合って建っているお店の間で一寸戸惑っている気持ちが伝わってきます。


桜漬
いと軽き石のおもしや桜漬
高浜虚子


「いと軽き石のおもし」に、美しい桜の花をなるべくつぶさないよう、きれいに漬けようとする気遣いが表れています。「重石(おもし)」と漢字で書かず、「おもし」とひらがなに開かれていることで、桜花の柔らかさも伝わってくるようです。


桜鯛
俎板に鱗ちりしく桜鯛
正岡子規


桜鯛は、桜の咲く時期に産卵のために沿岸に集まる、桜色の婚姻色に染まった真鯛のこと。掲句からは俎板の上で今まさに鱗をとりたての、桜鯛の新鮮さが伝わります。「鱗ちりしく」は、鱗をまるで桜の花びらのように描写していて華やか。美しく美味しそうな桜鯛の姿が目に浮かびます。


花見酒
平樽や手なく生るゝ花見酒
井原西鶴


平樽とは、取っ手のない平たい酒樽。「手なく生るゝ」は、たっぷりの平樽の酒がどんどん注がれるさまでしょうか。井原西鶴は、24時間俳句を詠み続けて句数を競う「矢数俳諧」で、最高23,500句を作ったという記録があります。4秒に1句…驚異的です。



春ならではの旬の食を愉しみながら、みなさまも一句したためてみては。


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