新潟県上越市安塚の魅力をデザインの力で広める「里山ボタニカル」の取り組み|AKOMEYA TOKYO

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新潟県上越市安塚の魅力をデザインの力で広める「里山ボタニカル」の取り組み

アコメヤで毎年恒例の「新米祭り」が、今年も10月10日(金)から始まります!
今年注目のひとつは、新潟県上越市安塚地区の棚田で育った「里山ボタニカル」のコシヒカリと、同じ棚田の酒米から生まれた日本酒「MANDOBA」です。
この取り組みを手がけるのは、新潟市のデザイン会社「U・STYLE」。代表の松浦和美さんが、都市で培ったデザインの仕事と、故郷の里山を棚田から再生するというユニークな挑戦を続けています。
今回のAKOMEYA通信では、この「里山ボタニカル」の取り組みにフォーカスします。
株式会社U・STYLE代表 松浦和美さん

主婦からデザイナーへ、そして起業
「里山ボタニカル」は、新潟県新潟市のデザイン会社である株式会社U・STYLEが立ち上げたブランド。
代表の松浦和美さんが、故郷である新潟県上越市安塚地区の里山の魅力を伝えるべく、2018年にスタートしたプロジェクトです。

和美さんが安塚を離れたのは30年ほど前。結婚を機に新潟市へ移り住み、二人の子どもを育てながら主婦として過ごしました。
転機は子育ての最中。「デザインで社会に幸せを提供したい」と一念発起し、幼い子どもを抱えながらデザイン専門学校へ入学。卒業後はデザイン事務所で経験を積み、2006年には新潟市で「U・STYLE」を起業。企業や自治体のプロジェクトを手がけながら、地域や社会にデザインで関わる仕事を広げていきました。

忙しい日々のなかでも、夏休みや年末には子どもを連れて安塚の実家へ。父母の田んぼを手伝い、自然とともにある暮らしを体験する時間が、家族にとって大切な記憶となっていきました。


ミラノでの気づき、母の他界

40代の頃、和美さんはイタリア・ミラノを訪れました。
ボタニカルガーデンで目に留まったのは赤紫蘇。幼いころに裏庭で当たり前のように見ていた植物が、文化や学術の対象として扱われている姿に驚かされました。
「日本の里山にも、世界に誇れる価値があるのではないか。」

その思いを抱えて帰国した矢先、母が他界。父も高齢となり、実家の米づくりは途絶えかけていました。思い出の棚田が荒れていく姿を前に、和美さんの心に強い決意が芽生えます。

「デザインで培った力を、故郷の棚田のために使いたい。」


「里山ボタニカル」の立ち上げ

2018年、和美さんは実家の田んぼを引き継ぎ、米づくりを始めました。
農薬や化学肥料を使わない棚田での挑戦は、想像以上に大変。水不足の年はため池から軽トラックで水を運び、荒れた田んぼを再生する日々が続きました。

それでも「安塚の里山には、まだ多くの可能性が眠っている」と信じ、田んぼの米やハーブを使った商品をデザインし、マルシェで試みると多くの反響がありました。
こうして「里山ボタニカル」というブランドは歩み始めたのです。


家族とともに続く挑戦

やがて、息子の裕馬さんもU・STYLEに合流。建築や都市計画を学び、東京で地域支援に携わった経験を活かし、酒造りやブランディングを担当しています。
弟やその家族も加わり、いまでは「家族も加わったクリエイティブチーム」として棚田を耕し、未来を描いています。


天水田(てんすいでん)」での米づくり
「里山ボタニカル」の米づくりは、上越市安塚の中山間部にある松浦さんの棚田で、ご家族総出で行われています。
平日は新潟市のデザイン会社での業務、土日は安塚での米づくり、という二拠点生活です。

山間部の棚田は、川から水路を引くのではなく、ため池に溜まった雨水や雪解け水、山の湧き水などを利用して米づくりをする「天水田」です。ここで、栽培期間中の農薬・化学肥料不使用で米づくりを行っています。
肥料は、もみ殻や米ぬか。土に混ぜて発酵させます。
今年は4月頃から気温が高くなり、梅雨が短く降水量が非常に少ないので、ため池の水がどんどん蒸発して枯渇してしまい、田んぼから離れた場所から、軽トラックで水を運搬し使用しています。
4,500リットルの水を運んでも、降水量にすると1~2mmに匹敵するほどしか田んぼは潤いません。毎日天気を見ながら水を運搬して田んぼの状態を調整しています。
そして、台風の多くなる時期に被害が出ないよう、タイミングを見計らって棚田にコンバインを入れ、稲刈りをします。
松浦さんの棚田がある安塚区大原という集落は、江戸から明治にかけては100軒以上の農家がありました。
家族の人数も多かったため、家族の食料を賄うために、山はどんどん開墾されていました。
しかし、現在集落の家は20軒ほど。耕作放棄地も目立ってきています。
耕作放棄地は、3~4年経過するともう元の田んぼの姿に戻すのは困難なほど、雑草や樹木が生えて自然の姿に戻ってしまいます。
そこで松浦さんたちは、耕作放棄地の再生にも取り組んでいます。
当初松浦さんのご両親から継承した田んぼだけで米づくりをしていましたが、現在では当初の5倍ほどの約1.07haで米づくりを行っています。


「天水田」で作られた酒米を使った日本酒
「里山ボタニカル」では、棚田で酒米「五百万石」も育てており、その酒米を使った日本酒も造っています。
和美さんの息子、裕馬さんがディレクションを担当し、同じ上越市の大潟に蔵を構える「竹田酒造店」が、「里山ボタニカル」の栽培期間中農薬・化学肥料不使用で作られた酒米に込められた思いに共鳴。できる限り手を加えない伝統的な製法にこだわり、精米歩合は85%でできるだけ米を削らずに米そのものの美味しさを生かし、乳酸を人の手で加えることなく、自然に育つ乳酸菌の力で酒母を立てる『きもと造り』。さらに酵母も人の手で加えず、蔵にすみつく酵母を呼び込みながら醸しています。
作り手の徹底した自然への敬意が込められた日本酒です。
2022年にプロジェクトを開始し、この日本酒は「MANDOBA」と名付けられました。
「MANDOBA」=万燈場(まんどば)とは、松浦さんが米づくりをする天水田の呼び名。康元元年(1256年)、峰向こうにある古刹・専敬寺の36世円道和尚が親鸞聖人の弟子となった事から浄土真宗に改宗し、それまで使っていた器物や経文を、この棚田のある土中に埋蔵したことから「万燈場」と呼ばれるようになったと言われています。
今回アコメヤで販売されるのは、この「MANDOBA」のアコメヤ限定ラベルです。

「里山ボタニカル」のこれから
「里山ボタニカル」はいま、米や酒だけでなく、酒米から作られた麹を使ったスイーツや、里山のハーブティーなどにも広がり始めています。和美さんは言います。

「棚田はただの農地ではなく、人が自然と向き合いながら生きてきた記録そのもの。そこに新しい価値を見出し、次の世代へつなげていきたいんです。」

一人の女性の決断から始まった挑戦は、家族を巻き込み、地域へ、そして未来へと広がっています。
和美さんの息子の裕馬さんは35歳。今後の地域の農業を担う若手として期待が膨らみます。

アコメヤでの「里山ボタニカル」のお米と日本酒の販売をきっかけに、多くの方に「里山ボタニカル」の取り組みを知っていただき、また日本の農業の課題にも関心を持っていただけることを願っています。
美味しいお米と日本酒を通して、米づくりや酒づくりをする現場の方々の思いに触れてみてくださいね。

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