「シギの恩返し米」の産地、佐賀県東よかに行ってきました!|AKOMEYA TOKYO

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「シギの恩返し米」の産地、佐賀県東よかに行ってきました!

 日本で最も多くのシギ・チドリ類が渡来する、佐賀県の「東よか干潟」は、国際的に重要な湿地として2015年5月にラムサール条約湿地に登録されました。
 ラムサール条約は1971年2月2日にイランのラムサールという都市で開催された国際会議で採択された、湿地に関する条約です。正式名称は、「特に水鳥の生息地として国際的に重要な湿地に関する条約」といいます。
 この条約に基づき、「ワイズユース(湿地から得られる恵みを持続的に生活に活用する)」の一環として、2017年7月から地域の農家、農協、行政、大学、IT企業などが連携し、ラムサールブランド化を目指す「シギの恩返し米」プロジェクトがスタートしました。
 「シギの恩返し米」の名称には、干潟や水田などに集うシギ(野鳥)から、自然環境を大切にする人々への感謝の贈りものという意味が込められています。
 シギの恩返し米生産部会、WWFが、東よか干潟とそこに面した農地に生息する野鳥や魚類など、美しい自然と共生していくため、環境への配慮、生物多様性の取り組みを含めたお米作りを開始。
 2021年にはAKOMEYA TOKYOも販売・販促での活動に参画し、5ヵ年計画の取り組みがスタートしました。
 今年はその2年目です。8月の末日、シギの恩返し米生産部会の生産者の皆さま、佐賀市役所東与賀支所の皆さま、WWFジャパンの担当の方と東与賀現地でお会いしてきました。
AKOMEYA TOKYO(以下AKOMEYA):東与賀地域は元々お米作りが盛んな地域なんですか?
シギの恩返し米生産部会(以下シギ):元々お米作りは行われていましたが、約40年前に干拓し、よりお米作りに適した環境へ整備されました。

AKOMEYA:干拓したところを田んぼにしたということですが、塩は残らなかったのですか?
シギ:干拓後は数年にわたって、綿やすいかを作り続け、お米作りができる環境に作り上げました。

AKOMEYA:生産者の皆さまも干潟の生態系の変化は感じますか?
シギ:昔は貝類が良く取れましたが、今ではほとんど見なくなりました。この辺の川にはウナギもいて昔は川に入って捕っていましたよ。メジロなんかもたくさんいましたね。稀ですけど、冬場に鶴が休憩をしに飛来したりすることもありました。

AKOMEYA:収穫の時期が近付いて来ましたね。
シギ:収穫のタイミングはとてもデリケート。台風が来るかもしれないから天気予報にはとても敏感。収穫のタイミングが10日違うだけで、お米の出来上がりが変わってきます。特にお米のふくらみに影響があり、お米の等級が変わることもある。収穫して終わりではなく、どの位の水分量で出荷するのか?そのために乾燥期間はどれくらいか?など、経験がとても大事。ただ昔に比べ、乾燥技術も発達し、だいぶ楽になりました。ただ、最近の気候の変化には驚いています。

AKOMEYA:今年も暑いですが、順調ですか?
シギ:日照時間がたっぷりあるので問題ないですが、今後台風が来ないかが心配。海が近いので台風が直撃すると塩害がとても心配です。

AKOMEYA:田んぼの水が濁っていますね?これはどうしてでしょうか?
シギ:自然に配慮した生産方法のおかげで、おたまじゃくし、カエルなど多くの生物が元気に泳いでいるから濁っているんです。これはとても良いことで、環境に配慮した生産方法だと、慣行栽培よりも雑草が生えやすい。でも小さな生物たちが生息し、泳ぎ、水が濁ることで、日光が田んぼまで届かなくなり、雑草が生えにくくなるんです。

AKOMEYA:良い生態系が良い生産環境を作っているんですね。とても良いサイクルです。
シギ:生産者の高齢化で、実は除草作業もとても大変。自然に配慮した栽培方法を数年続けてやっとその栽培方法にあったお米が出来る。毎年毎年試行錯誤を重ね、だんだん良くなってきています。

AKOMEYA:WWFさんが参画されたきっかけは?
WWFジャパン(以下WWF):この地域の生態系の改善に以前から着目していたところ、「シギの恩返し米」を知り、活動の後押しが始まりました。持続可能なお米作りを続けていくためには、やはり多くの方に知って頂く必要がありました。そこでアコメヤさんにお声掛けをしました。

AKOMEYA:なぜ「夢しずく」がシギの恩返し米に選ばれたのですか?
シギ:昔から東与賀では作られているお米で、「さがびより」よりも多く生産されていて、この地域ではとても馴染みがあるお米だからです。

AKOMEYA:シギの恩返し米を作り始め、変わったことは何ですか?
シギ:認知度は確実に上がりましたし、このお米を通じて、東よか干潟を知って頂いていると思います。ただ、一番聞かれるのは「シギって何ですか?」なんです(笑)お米の前に、「シギ」の話から始まることがほとんどです(笑)

AKOMEYA:シギの恩返し米の特徴は何でしょうか?
シギ:噛めば噛むほどに広がる優しい甘みですね。和食に合うお米だと思います。ふっくらとツヤがあるのも特徴です。化学合成肥料は使用せず、有機由来肥料のみを使用しています。また持続可能な農業生産や経営改善のための佐賀県GAP認証(第1号)の取得と、2021年3月に「持続可能な農業推進コンクール」で九州農政局長賞を受賞しました。

AKOMEYA:シギの恩返し米の美味しい食べ方は何ですか?
シギ:シンプルに食べるのが一番。漬物と味噌汁があれば十分です。おにぎりもお勧め。噛めば噛むほど甘味が拡がりますし、冷めても食味が落ちないです。塩昆布などの心地よい塩味がよりお米の甘さを引き立てます。

AKOMEYA:シギの恩返し米の他に、東与賀で環境保全に取り組んでいる事例はありますか?
シギ:水路に木柵を立てる活動をしています。佐賀県産の間伐材を使って、水路内の側面をコンクリートではなく、木柵にしています。木柵にすることによって、魚や小さな生物が住みやすい環境になります。
また、水田魚道を設置し水路と田んぼを生物が行き来できる環境を整えたり、冬水田んぼ(収穫から田植えの間に田んぼに水を張っておく状態)で生物多様性の保全や向上にもたらす効果の検証なども行っています。
2020年度からは地元小学校給食へシギの恩返し米の提供を開始し、毎月1回、シギの恩返し米についてや、生物との共存について、農業や自然環境の大切さなどを子供たちに伝えています。
WWF:東与賀地域は、カワバタモロコやニッポンバラタナゴなどの希少な淡水魚が生息している地域でして、生育数の改善にもとても期待しています。九州大学とも連携していて、この地域の全体の生態系の改善に繋がる環境活動、学生の皆さまへの発信なども合わせて行っています。
AKOMEYA:本プロジェクトの5ヵ年の目標は?
シギ:作付け面積の拡大、販売量の拡大、認知の拡大です。
WWF:各生物の数値的な目標をクリアしたいですが、ハードルは中々高いのが現状。今後も現地の方との連携を強化していきたいと思っています。

AKOMEYA:一番の悩みは何ですか?
シギ:一番の悩みは後継者問題。現在の中心メンバーは60~70代。これは表層的な問題ではなく、環境、仕組、ルールなど各所が一斉に改革を進めないと解決はしにくい問題。若手の担い手が入りやすい環境、仕組みが必要だと感じています。



新しいお米作りは一朝一夕でなしえることではなく、5年10年を掛けて、土壌が良くなり、自然に配慮した栽培に適した土壌になり、栽培方法も安定、結果生産者も増えていくのでしょう。今、シギの恩返し米の栽培に取り組んでいる生産者の皆さまは、東与賀の未来のお米作り、未来の環境のためにとても大変なご苦労と工夫で取り組んでいることが良く分かりました。 シギの恩返し米を口に入れた時の印象が大きく変わりますね。

その「シギの恩返し米」を、東よかの自然を想いながらぜひ味わってみてくださいね。