「シギの恩返し米 純米酢」の美味しさの秘密を公開!|AKOMEYA TOKYO

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「シギの恩返し米 純米酢」の美味しさの秘密を公開!

今回は、アコメヤで2022年10月に新発売の「シギの恩返し米 純米酢」の製造工程をレポート。美味しさの秘密を公開します。

 ポイント!
・環境に配慮して栽培された「シギの恩返し米」の「くず米」を使用し廃棄とコストを削減
・通常の3倍量の米を使用し水で薄めず旨味の濃い純米酢
・134年間守り続けてきた河野酢味噌の酢酸菌で丁寧に静置発酵


「シギの恩返し米 純米酢」に使用するお米は、昨年からアコメヤで販売中の「シギの恩返し米」。
「シギの恩返し米」が作られている佐賀県佐賀市の農地付近には、日本で最も多くのシギ・チドリ類が渡来する「東よか干潟」があり、平成27年にラムサール条約湿地登録をされました。干潟とそこに面した農地には、絶滅危惧種である野鳥や植物、魚類が数多く生息しています。これらの美しい自然や生きものと共生していくため、「シギの恩返し米」プロジェクト推進協議会とWWFジャパン(世界自然保護基金)が協業し、生物多様性の取り組みを含めた米づくりをスタート。
AKOMEYA TOKYOも販売に携わり、5ヵ年計画で取り組みがスタートしました。
その「シギの恩返し米」の"くず米"を廃棄せず、お酢にしたのが今回の「シギの恩返し米 純米酢」。くず米とは、精米の途中で割れたり粒の大きさが不揃いだったりして、お米としては販売されなかったものです。くず米を使用することで廃棄を減らし、コストを抑えています。
「シギの恩返し米 純米酢」を製造いただいたのは、河野酢味噌製造工場。
河野酢味噌さんは、10月に新発売の「アコメヤの木桶味噌」も製造いただいており、その味噌の熟成をすすめると同時に、実はこちらの酢も同時に製造されていたのです。
早速、お酢の製造工程を順番に見ていきましょう。

<1. 蒸し米>
「良い酢造りは良い醪(もろみ)造りから」と言われるほど醪作りは大事な工程です。
その醪造りは精米から始まります。お酢の糀用の精米歩合は90%。精米を終えた米は、洗米の後浸漬され、甑(こしき)で約40分間蒸されます。
今では自動で米を蒸す機械を使うところが増えていますが、河野酢味噌では目の届くところで品質を第一に造りたいという考えから、蒸しあがった米も少しずつ、丁寧に扱っています。
通常、1リットルあたり40gのお米を使用していれば「米酢」と呼べるところ、今回の「シギの恩返し米酢」は、1リットルあたり通常の3倍の120gものお米を使用。旨味が強く糀の香りが残る酢に仕上げていきます。

<2. 麹づくり>
蒸しあがった米を蔵人達が手作業で冷やし、麹菌を米の一粒一粒まで着くように丁寧にまぶしてから、麹菌を繁殖させるため、麹室(むろ)へ移します。
この麹菌は「たねもやし」と呼ばれ、河野酢味噌で代々使われている、旨味が強く蛋白質を分解する力の強い種菌を使用しています。
麹室では職人達が米の塊を何度も手を入れながらほぐしてやり、お酢造りに最適な糖化力と蛋白分解力の強い麹を作り上げます。
出来上がった麹を常温まで冷ましてから、醪作りに使います。
醪造りの重要なポイントとなる麹造りは気の抜けない工程です。機械に頼ることなく、蔵人が丁寧に手を使う事で肌理の細かな麹が出来上がります。

<3. 酒母づくり>
麹が出来上がると、酒母造りが始まります。
小さなタンクに麹と水、蒸した米、酵母を加えて酒母を仕込みます。
酵母は日本醸造協会から「7号酵母」というものを購入して使用しています。
仕込みが終わると20℃以下で数週間、温度を管理しながら酵母を増やしていきます。
常に酒母の状態を見ながら、細やかな温度管理を行う事で、元気な酵母を増やしていきます。

<4. もろみづくり>
酒母が出来上がると、大きなタンクに移してもろみ造りが始まります。
水と麹、蒸し米を3回足す「三段仕込み」と呼ばれる方法でタンクに仕込んでいきます。
麹菌によって蒸し米の「デンプン⇒糖」に変わる反応と、酵母菌によって酒母の「糖⇒アルコール」に変わる反応を並行して行う「並行複発酵」という状態になります。
そして、最初の投入からおよそ30日でもろみが完成します。
この間、蔵人は常にもろみの状態を確認し、必要に応じて櫂入れなどを行います。
出来上がったもろみは「酢もともろみ」と呼ばれ、アミノ酸が多く、旨み、甘味、酸味などの味が複雑に合わさり、のちに美味しいお酢が出来上がります。
「酢もともろみ」を作るには、「酢もともろみ免許」が必要です。

<5. 米酢づくり>
「酢もともろみ」が出来上がり、お酢造りの始まりです。
タンクに種酢と水、「酢もともろみ」をいれ、酢酸菌を移植します。
2日後にはこの酢酸菌がタンクの表面を覆うように増殖し、酢酸発酵が始まります。
この酢酸菌は、創業した明治21年(1888年)から河野酢味噌の蔵に住みつく、最も大事な菌です。
その菌を醪から醪へと移植しながら今日まで大事に培われてきました。
河野酢味噌の酢酸菌は、ムレ香(むれたようなにおい)が少なく、酸度が5.5%程度しか出せません。
安価に量産する場合、20%以上の酢酸を作る耐酸性酢酸菌を使い、水を加えて酸度を下げる作り方もありますが、そうすると旨味が薄く酸っぱい酢になってしまいます。
河野酢味噌の菌が持つ個性が、お酢の味や香りの個性となっています。

<6. 発酵>
河野酢味噌の蔵では創業より変わることなく「静置発酵」と呼ばれる発酵方法でお酢を造ります。
これはタンクの表面を覆うちりめん状の膜となった酢酸菌が、90~120日(3~4ヶ月)かけてゆっくりとアルコールをお酢に変えていく発酵方法です。
比重が「酢1.05:水1:アルコール0.8」なので、酢ができると沈んで自然に循環するのです。
38℃を好む酢酸菌の繊細な表情を見ながら、発酵熱を逃がしすぎないように板を使って空気を入れる量を調整していきます。
蔵人の経験と勘、時間と手間がかかる方法ですが、水と酢酸が調和し、まろやかなお酢に仕上がります。
効率を優先させる多くの食酢メーカーでは、「静置発酵」を行わず、機械で人工的に空気を送り、温度を上げて数日で発酵を終えてしまいます。この速醸法は「全面発酵」と呼ばれています。

<7. 熟成>
発酵が終わると、熟成に入ります。
今回のお酢は、約60日もの間熟成。
熟成と言っても、味噌や醤油のそれと違いただ単にタンクで寝かせておくだけではなく、3回タンクを換えながら、何度も空気に触れさせる事で、やわらかな酸味とまろやかな風味で香りの良いお酢に仕上げていきます。
発酵が終わるとすぐにボトリングするところも多い中、河野酢味噌では味を良くするために「移槽」を行っているのです。
酢酸発酵が終わると「こんにゃく菌」と呼ばれるゲル状のものが発生して臭いが出てしまうので、すぐに取り除きます。
ちなみにこの「こんにゃく菌」は、「ナタデココ」として市販されているものの元となる菌で、ナタデココはココナッツにこんにゃく菌を入れて作られます。
熟成が終わったら、ボトリングしていよいよ「シギの恩返し米酢」の完成です!
こうして気の遠くなるような手間ひまと愛情をかけて河野酢味噌で造られた、「シギの恩返し米 純米酢」。
ひと味違う純米酢の味わいを、ぜひお試しくださいね。